essay大学エッセイ

共通テストリサーチ、利用上の注意点(あとがき)

 前回の本論で、データが示す「合格可能性」のみに頼って出願校を決めることの危険性についてお話ししました。準備してきた勉強の内容と、出願校の入試問題の中身のマッチング(相性)についても、十分に吟味する必要があるということです。

 では、神戸大を第一志望にしてきたこの受験生が、候補に挙げた中からどの大学を選ぶべきか、もうお分かりですね。標準的な問題が多く、その中で高得点を取ることが求められるという、神戸大と似た特徴を持つ岐阜大と三重大ということになります。ただし、それがベストの選択なのか、もう一度よく考えてみましょう。

 前回の本論で、「滋賀医大へのチャレンジは、長距離の練習を繰り返してきた陸上や水泳の選手に、いきなり短距離への出場を求めるようなもの」と記しました。ここでの「長距離の練習」とは、神戸大の対策を意味するわけですが、「長距離」といっても、コースの特性に応じて対策には違いが生じます。標高や気象条件の違い、トラックの硬さや弾力、マラソンなど陸上のロードコースなら、平坦なコースか起伏のあるコースか(箱根駅伝の山登りや下りは極端な例)の違いもあります。入試問題も同じで、標準的な問題といっても、傾向にはそれぞれ特徴があるはずです。

 長い期間をかけて準備してきた神戸大と、ほとんど見たことない岐阜大や三重大とで、どちらが点数を取りやすいか、実際に解いてみて確かめる必要があります。神戸大の問題が「低地での平坦コース」で、岐阜大や三重大の問題が仮に「空気の薄い高地にある起伏の激しいコース」であったなら、選択すべきはもともとの志望校、神戸大となるかもしれません。

 この受験生の共通テスト得点率83%と神戸大B判定ラインとの差4.5%は、一次配点に換算すれば16.2点。二次配点450点の3.6%です。合格に必要な二次試験での320点(本論の計算で318.16)をどう取りに行くか、筆者ならそこで勝負します。

 やや極端な例を用いてお話してきましたが、最も重要なことは、共通テストの結果で出願校を変えざるを得ないようなことを避ける、ということです。共通テストは、高校の授業内容を理解し、そのレベルでしっかり対策すれば得点できる問題です。あとは時間内に解くというプレッシャーに打ち勝つトレーニングを徹底して行いましょう。

 付け加えるすれば、もしもの時に慌てないよう、第二志望をどこにするか、前もって候補となる他大学の問題に目を通し、目星をつけておくことですね。

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